書評「群衆心理」集団心理と動かす方法を学ぼう【ヒトラーも学んだ】

「集団と個人の違いって何だろう?」

「いじめってどうして起こるのだろう?」

結論から言えば、集団は個人よりも知能が低く、感情的に動きやすく、暴走しやすい傾向があるからです

頭の良い人々が会議を開いたとしても、優れた結論が出ることがありません。

また、集団は知能が低くなり、理論が理解できないため、感情で動く動物のようになります。

さらに、責任が明確ではないので、人間本来が持っている攻撃的な本能を持ちやすくもなります。

集団でいることは一見優れているように見えるかもしれませんが、そんなことはありません。

また、アドルフ・ヒトラーはこの本で集団の動かし方を学んだと言います。

現代にいる我々も、この「群衆心理」から集団を動かすリーダーがどのような手法で群衆を動かすのかを学ぶことで、理論的に判断できるようになるでしょう。

本日は集団の心理を学ぶ古典的名著でもある、群衆心理について解説します。

「群衆心理」のあらすじ

民主主義が進展し、「群衆」が歴史をうごかす時代となった19世紀末、フランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボンは、心理学の視点に立って群衆の心理を解明しようと試みた。フランス革命やナポレオンの出現などの史実に基づいて「群衆心理」の特徴とその功罪を鋭く分析し、付和雷同など未熟な精神に伴う群集の非合理的な行動に警告を発した。今日の社会心理学の研究発展への道を開いた古典的名著である。

引用:Amazon

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群衆心理の特徴「原始人のようである」

群衆心理によると、群衆になることにより、原始人に近くなると言います。

孤立していたときには、恐らく教養のある人であったろうが、群衆に加わると、本能的な人間、従って野蛮人と化してしまうのだ。原始人のような、自然さと激しさと凶暴さを具え、また熱狂的な行動や英雄的な行動に出る。言葉や心象によって動かされやすく、自身の極めて明白な利益をもそこなう行為に煽動されやすい点からも、さらにいっそう原始人に近いのである。

原始人に近くなる理由は、群衆心理の下記3つの特徴があるからです。

  • 知能が失われる
  • 精神的感染
  • 没個性化

それぞれ解説します

知識が失われる「頭が良い人も集団では普通の人」

「頭が良い人が集まれば、良いアイデアが思いつく」という幻想は捨てたほうが良いかもしれません。なぜなら、頭が良い人が集まれば集まるほど、集団では意味をなさないからです。

群衆心理によると、群衆の知能は個人に劣ると言われます。なぜなら集団になることでより、優れた知能が詰みあがるのではなく、みんなに共通する「普通さ」に合わさるようになるからです。

たとえば、専門家会議でも特に優れている結論を出すわけではないですよね。普通の人に毛の生えた程度な意見がでるくらいですよね。なかには、「え?どうしてそんな結論を出すの?」って驚くようなものもあるでしょう。

これこそが、集団の特性なのです。徒党を組んだところで、特段優れているわけでもないんですよね。

精神的感染「自分の人生よりも集団を優先してしまう」

集団にいると、個人ではやらないようなことをやってしまうことがあります。

たとえば、いじめ。

いじめは、誰かが「あいつは悪い奴」と決めることにより、集団の精神的感染が働きます。

集団の精神的感染は非常に強いです。なぜなら、集団で行動していると、無意識にお互いに暗示を掛け合うからです。

誰かが行動をする→行動が称賛される→やった方が良いんだと思うという流れです。例えば、SNSの炎上とかだとわかりやすくて、

あいつが悪いという衝撃→叩いている人を見ることで感染される→自分も叩く

という流れになります。他の人の行動をみて「やった方が良いんだ」と思うことで、やってしまうこと。これが精神的感染なのです。

没個性化「無意識活動の奴隷」

実際に行動する際には、集団からの影響をもう一つ受けていることがあります。それが、集団にいると自分の個性化がなくなること。つまり、没個性化です。

没個性化とは、自分では絶対にやらないことをやってしまったり、自分の良さを出すことができないことを言います。

例えば、集団になると自分のやりたいことができなくなったり、自分が思ったことが発言できなくなりますよね。これが没個性化なのです。

そのため、集団の中では個性的な特徴を出すことは難しいのです。

群衆心理の問題点

群衆心理の特徴は原始人に近いものがあると言いました。そのため、集団で生活していることにも問題があります。それはいったい何なのでしょうか?

  • 事実とは異なる視点で見てしまう
  • 群衆は暴走する
  • 群衆は新しいものを受け入れない

それぞれ解説します。

事実とは異なる視点で見てしまう

集団で何かを評価する際には、事実とは違う認識をされるケースが多いです。なぜなら、集団で評価するものは、集合した個人の想像により事実が歪められてしまうからです。

その原因は精神的感染にあります。集団で何かを評価する場合、正しかろうが間違っていようが最初のイメージが周りに認められると、一瞬にして精神的感染が引き起こされるからです。

これは歴史書などを見るとわかりやすいと思います。

歴史上の人物で良い人だと思われていた人でも、群衆の中で悪い人に変わる例が多々あります。

また、悪い人物だと思われている人も、一部の群衆の中では良い人に変わる例もあります。

だれかが「あいつは悪い奴だ!」と言い、他の人が「その通りだ」と認められてしまえば、精神的感染が始まり、事実がゆがめられて認識されるという訳です。

特に、昨今はSNSが発達しているので、一瞬のうちに広がってしまい、炎上するという訳です。

群衆は暴走する

集団にいることにより、普段の自分では考えられない行動をとることがあるでしょう。集団になると人は暴走するという問題があります。

暴走する原因は、責任が不明確だからです。

個人であれば責任が明確です。誰がやったのか明らかなのですから。

しかし、集団には責任が明確ではありません。

集団の中にいれば罪がバレないため、人間が本来持っている破壊的衝動に駆られてしまうのです。

群衆を暴走させるのは論理ではなく感情です。集団になると知能が低下するので、論理で考えるよりも感情で考える方が強くなってしまいます。

感情で心情を揺さぶられ、精神的感染により、暗示をかけられ続けることにより、集団は暴走するようになるのです。

群衆は、巧みに暗示を与えられると、英雄的精神、献身的精神をも発揮することができるのである。しかも、単独の個人よりも、はるかにこれを発揮することができさえする

群衆は新しいものを受け入れない

残念ながら集団でいる人は新しいものを受け入れることができません。

保守的でいるのは生存するための人間の本能でもあります。

人が集団になれば、論理で考える力が弱くなります。その結果、人間の本能の方が上回ってしまうのです。

そのため、論理で考えれば新しいアイデアを受け入れることができるような場合でも、集団になることにより、人間が本来持っている保守的な本能が強くなってしまえば、受け入れることができなくなってしまうのです。

群衆心理でも下記のように説明されていました。

群衆は、根強い保守的本能を具えていて、あらゆる原始人のように、伝統に対しては拝物教的敬意をいだき、現実の生存条件を改めかねない新しい事実を無意識に嫌悪する。

たとえば、新しい制度を導入しようとした際に、必ず抵抗してくる人が現れます。抵抗する人は集団であることも多く、保守的本能が働いたと見て取れるでしょう。

群衆を動かす方法とは?

群衆に対して、理論で説明したとしても、群衆が行動を起こしているのであれば、その理論は群衆の感情に結びついてしまっているため、行動を変えるのは困難です。

群衆は新しいものを受け入れることもありません。知能をもって判断することもできないという特徴があります。

ただ、一方では、群衆は誰かの強い意見や、強い感情に従う奴隷でもあるので、うまく行動すれば群衆を動かせるのです。

では、具体的にどのように感情に訴えかけることができれば、群衆を動かすことができるのでしょうか?

群衆の心理を動かすには「感情に訴える」

群衆は、人間が本来持っている保守的な本能を強く持っています。そのため、群衆に理論で訴えても、あまり効果がありません。群衆を動かすには感情に訴えることが重要です。

感情に訴えるには下記の3点が効果的だと言われています。

  • 誇張
  • 断言
  • 反復

誇張、断言、反復は多く活用されてきた、演説方法でもあります。

フランス革命であれば「自由」であったり、南北戦争であれば「奴隷開放」が当てはまるでしょう。

例えば、バラク・オバマの「チェンジ」や、小泉純一郎の聖域なき「構造改革」などが当てはまるでしょう。

ある言葉を誇張して表現し、「~せねばならない」断言し、それを反復することで徐々に効果を発揮していきます。

言葉の意味は曖昧だけど、何度も重ねて言えば、意味がなくても、大きな影響力を発揮してしまう。

たとえ、そこに論理がなくても、人は反応します。むしろ推論をして証明しようとすれば、ボロが出る可能性もあるので、推論をしてはいけないのです。

幻想を与えて心に訴える

群衆には理論で訴えても理解する知能がないので意味がありません。

しかし、巧妙にも群衆の心に訴えることにより、群衆を動かすことが可能なのです。

感情に訴えるには心に訴えるのが効果的です。下記のような心に訴えるようにしましょう。

  • 名誉心
  • 自己犠牲
  • 宗教的信仰
  • 功名心
  • 祖国愛

上記のような心に訴えるには道理ではなく幻想が重要です。つまり、心を動かすためには、群衆にとって都合の良い幻想を与えることが重要なのです。

本書でも下記のように書かれていました。

群衆は、自分らの気にいらぬ明白な事実の前では、身をかわして、むしろ誤謬でも魅力があるならば、それを神のように崇めようとする。群衆に幻想を与える術を心得ている者は、容易に群衆の支配者となり、群衆の幻想を打破しようと試みる者は、常に群衆のいけにえとなる。

群衆心理の欠点を解消し、群衆を動かそう

群衆心理の特徴は下記のとおりです。

  • 事実とは異なる視点で見てしまう
  • 群衆は暴走する
  • 群衆は新しいものを受け入れない

群衆を動かす方法は下記のとおりです

  • 誇張、断言、反復をして感情に訴える
  • 都合の良い幻想を与える

群衆心理に捕らわれない方法は、判断が理論的でなかったり、攻撃的になってきた集団があれば、率先して離れることです。

集団から離れることにより、自分の頭で考える時間も持てますし、暗示もかからなくなります。そうすれば、理論的に判断できるようになるのです。

以上、書評「群衆心理」集団心理と動かす方法を学ぼう【ヒトラーも学んだ】を解説しました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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