「貧困を解決するには何が必要かな?」
「日本は政治家が無能だからGDPが成長しないんだ」
結論から言えば、政府主導の構造改革はムダでしかありません。なぜなら、国の繁栄を目的として、政策や制度を変更したとしても大多数は失敗に終わっているからです。
発展途上国の政府機能を改善する目的で、制度改革に何十億ドルが費やされていますが、制度改革の70%が失敗に終わっているというデータもあります。
一見すると、貧困の解決をすれば、繁栄すると思うでしょう。残念ながら貧困の解決と長期的な繁栄には繋がりがありません。
では、どうすれば、国家は繁栄するのでしょうか。それは、市場を創造するイノベーション。つまり市場創造型イノベーションです。
今回は、繁栄のパラドクスから「市場創造型イノベーションの必要性と行う方法」を解説します。
「繁栄のパラドクス」あらすじ
“買えない/買わない”が、巨大市場に変わる時―最も成長が見込めるのは、貧困をとりまく「無」消費経済である。絶望を希望に変えるイノベーションの経済学。
引用:Amazon
繁栄には市場創造型イノベーションが必要
この本のテーマには市場創造型イノベーションをいかに起こすのかということです。市場創造型イノベーションとは、文字通り市場を創り出すイノベーションです。
本書の中で繁栄とは「多くの地域住民が経済的、社会的、政治的な幸福度を向上させるプロセス」だと定義しています。
この中で一番重要なのは経済的な幸福度を上げることです。経済的、社会的、政治的な幸福度はお互いに関連していますが、繁栄した国を見ていくと、社会的や政治的な幸福度からあげようと思ってもうまくいかない事例が多発していたからです。
- 貧困を解決するために井戸をほったといても、井戸が使われなくなってしまう
- 近代的な法律を整備しても汚職はなくならない
- 税制を整理したとしても、経済的に発展はしない
経済的な幸福度を上げるためやるべきことが、市場創造型のイノベーションなのです。
イノベーションの種類とは?
先ほどから市場創造型イノベーションという単語を頻発していますが、そもそもイノベーションには3種類の型があります。
- 持続型イノベーション
- 効率化イノベーション
- 市場創造型イノベーション
それぞれ解説します
持続型イノベーション
今あるものをより便利にするのが持続型イノベーションです。例えば、iPhoneの最新機種を指します。
iPhoneのカメラ機能や、バッテリーの長持ちさ加減を充実させることで、既存の消費者に新しいiPhoneを買わせることを目的にイノベーションさせます。
効率化イノベーション
今あるものをより安く提供するのが効率化イノベーションです。
大手企業が打ち出しているコストカット戦略は大体が効率化イノベーションです。工場を外部に移転したり、製造ラインを効率化したり、人件費をカットしたりすることも当てはまります。
効率化イノベーションだけをする国や企業はいずれ滅びる関係にあります。なぜなら効率化すればするほど、雇用が不要になるため、経済的な発展はしないからです。
市場創造型イノベーション
今手元にないものを創るのが市場創造型イノベーションです。例えば、iPhoneを初めて市場に提供したことは市場創造型イノベーションというでしょう。
市場創造型イノベーションは破壊的イノベーションに近いとも言われています。つまり、既存の市場をぶっ壊し、新しい市場を作り出すというわけです。
また、市場創造型イノベーションは、手元にないものを提供できるようにすることとも言われています。
- 高度な医療を低価格で提供する
- 水が効果な地域に安価で安全な水を提供する
- 携帯電話がない地域に携帯電話を提供する
繁栄をするには市場創造型イノベーションが必要不可欠だと言えます。なぜなら、雇用を生み出すことができ、貧困から抜け出すことができるのは、市場創造型イノベーションだけだからです。
大企業が破壊的イノベーションを引き起こせない理由は下記の本でも紹介されています。興味がある方はどうぞ。
市場創造型イノベーションを引き起こすにはどうするか?
市場創造型イノベーションが繁栄に必要不可欠だと解説しました。では、実際に市場創造型イノベーションを行うにはどうすれば良いのでしょうか?
本書では下記の5点が市場創造型イノベーションを成功させる5つの鍵と言われています。
- 無消費をターゲットに
- 実現を支える技術(低インプットを高インプットに)
- 新しい価値ネットワーク(コスト構造を見直しやすくする)
- 緊急戦略(新規顧客から学び変化させていく)
- 経営陣によるサポート(超長期戦)
この中でも特に重要なのは、無消費をターゲットに変えることだといいます。無消費をターゲットにできれば市場を創造するアイデアが見つかり、アイデアから実行に移せるからです。
残念ながら、無消費を見つけることは非常に難しいです。市場がない状態というのは、「解決したいけど良い手段が手元にない」という状態で、目に見えないからです。
例えば、携帯電話が無消費という形で現れている時、人々はいつでもどこでも電話したいけど方法がないため、無消費となっていました。
Kindleが出てくるまで、嵩張る本をバックに入れて持ち運んだり、本棚を購入して積めなければいけなかったわけですが、電子デバイスの本棚にするというのが無消費という形で現れていたわけです。
無消費に気づくことが難しいのは、AT&Tが携帯電話事業への投資を見送った例でもわかります。
本書でも下記のように述べられていました。
たとえば、AT&Tがいかにして携帯電話革命を支配するチャンスを逃したか。数十年前、AT&Tは、21世紀を迎えるころに世界で何台の携帯電話が出回っているかの予測を、ある有名コンサルティング会社に依頼した。コンサルティング会社は100万台そこそこと見積もり、AT&Tは結果的に投資を見送った。AT&Tが入手したあらゆる既存データは「期待薄」を示していた。当時の携帯電話は重くてかさばり、値段が高く、ほとんどの人には手の届かない代物だった。投資しないのは理に適っていた──少なくとも紙の上では。
有名コンサルティング会社がどこかはわかりませんが、とにかく優秀な人たちが市場を分析しても、無消費を見つけることができません。それだけ無消費に気づくのは難しいのです。
無消費を見つけるには?
市場創造型イノベーションは、無消費をターゲットにするのが必要です。しかし無消費に気づくことは有名コンサルティング会社の人でも難しいというのは、先ほども解説した通りです。
普通に市場を分析しただけでは、無消費を見つけられません。では、無消費を見つけるのにできることはなんなのでしょうか?
それはジョブ理論という観点から見つけることと言います。ジョブ理論とは、クリステンセン教授が前述した本に記載された理論になります。
超ざっくりと書くと「人は片付けたいジョブがあるから、製品、サービスを雇用する」という理論です。
例えば、「安心が欲しい」という片付けたいジョブがあるから、安価で十分な補償がある保険に入ります。「遠くの人と会話したい」という片付けたいジョブがあるから、携帯電話を購入するわけです。
私自身も、「副業を携帯でも行えるようにしたい」という片付けたいジョブがあったので、高機能なiPhoneにしました。
このように「人は片付けたいジョブがあるから、製品、サービスを雇用する」というのがジョブ理論なのです。
ジョブ理論のレンズを通して、無消費に気づくには下記の3つの質問が効果的です。
- 人の片付けたいジョブはなんなのか?
- もっと簡単に安価に行う方法はないか?
- なぜ使われていないのか?(なぜ無消費を雇用したのか?)
無消費に気づくのは非常にむずかしいので、つねに無消費を探し続けることが必要でしょう。
繁栄のパラドクスを読み、繁栄に貢献しよう
繁栄のパラドクスで書かれている市場創造型イノベーションについてまとめると下記の通りです
- 市場創造型イノベーションは繁栄に必要不可欠
- 市場創造型イノベーションをするには無消費に気づくことが重要
- 無消費に気づくには「片付けられていないジョブ」に注目する
最後に、本書では市場創造型イノベーションに関わっている人は国づくりに関わっていると言っています。個人的にはここが一番印象深かったです。
市場創造型イノベーションへの投資をつうじ、投資家と起業家は無意識のうちに国づくりにかかわっている。貧しい国の大半の人が該当する無消費者を対象とした市場を創造すると、それは雇用と利益を生み、発展途上の社会にとってきわめて重要な社会資本が整備され、整備された社会資本は次のイノベーションに活用され、好循環を形成する。
他には、イノベーションで世界が変わった話や、ブッシュ戦略は無意味だということも書いてありました。みなさんも是非読んでみてください。
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