「どのように組織を引っ張れば良いのかな?」
「成果が出る組織にするにはどうすれば良いのかな?」
結論から言えば、人を大切にし、チームを大切にし、一緒に働く人に対して愛を示すことだと言えるでしょう。
今回紹介する本「1兆ドルコーチ」は、Apple、Googleの創業者の師匠とも言われているビル・キャンベルが、創業者達や、その会社をどのようにコーチングしていったのかがまとめられた本だと言われています。
1兆ドルコーチの意味とは、1兆ドルもの価値を生むほど成功したという意味です。
- 潰れかけのアップルを立て直し数千億ドルの会社にするのを助けた
- グーグルを時価総額数千億ドルの企業にした
そして、1兆ドルコーチと言われるビルキャンベルは下記を構築するのが非常に上手い
- 心理的安全
- 明瞭さ
- 意味
- 信頼関係
- 影響力
今回は、「1兆ドルコーチ」より、人や組織をコーチングする方法を解説します
「1兆ドルコーチ」あらすじ
アメフトのコーチ出身でありながら、優秀なプロ経営者。ジョブズの師であると同時に、グーグル創業者たちをゼロから育て上げたコーチ。アマゾンのベゾスを救い、ツイッター、ユーチューブCEOらを鍛え、たった1人で、シリコンバレー中の企業に空前の成功をもたらした伝説のリーダー、ビル・キャンベル。これまで謎に包まれてきたその驚くべき教えのすべてがいま、初めて明らかに―。
引用:Amazon
目次
1兆ドルコーチから学ぶコーチの必要性「そもそもコーチは必要」
著書達は、前著にて、企業が速いスピードでイノベーションを実現するために欠かせない人材として、スマートクリエイティブという人材を紹介しました。
しかし、スマートクリエイティブには、欠落している要素があると言います。スマートクリエイティブだけでは、企業は成功しない。
なぜなら、スマートクリエイティブと同じくらい重要な要素として、「コーチング」が企業の成功には必要だからです。
Googleでは、以前エンジニアにマネージャーを置かないで、直接管理する仕組み(脱組織化)はうまくいかなかった。エンジニアに聞いてみたところ、「何かを学ばせてくれる人、意思決定の助けになるマネージャー」を必要としていた。
企業はイノベーションの段階ではマネージャーを必要とはしない。しかし、大きな組織になれば意見の対立が起こるために、マネージャーが必要となります。つまりコーチが必要なのです。
1兆ドルコーチの著者の前著は「How Google Works」になります。書評は下記の記事からどうぞ。
ピープルファースト「人を大切にする」
企業において従業員は人財と言われていますが、実例を用いて、実践方法を解説している本はなかなか少ないでしょう。本書では、人を大切にする方法として、
- 部下との接し方
- マネージャーがやるべきこと
- ミーティングの進め方
が解説されていました。
どうやって部下をやる気にさせるか「大事にされていると実感させる」
2007年の論文にて、マネージャーの権威について下記のように解説されていました。
部下や同僚、上司と信頼を気づくことによってこそ生まれる。逆に部下は権威主義的な管理スタイルに苛立つだけではなく、チームを去ってしまう可能性も高い。
ビル・キャンベルは、実際に、部下と信頼関係を築きたければ下記の行動が効果的だとして実行していました。
- 自分は大事にされていると、実感させろ
- 耳を傾け、注意を払う
- 謙虚さと献身を示して、部下に分かってもらえ
そんなビルが語っていた言葉に下記の言葉があります。
君が優れたマネージャーなら、部下が君をリーダーにしてくれる。リーダーを作るのは君じゃない。部下なのだ。
スティーブ・ジョブズが優れたリーダーになったのは、マネジメントの細部にこだわったからだともいっていました。
元々カリスマ性があり、情熱にあふれていたスティーブですが、マネジメントの細部にこだわり、プロダクトだけでなく、部門の運営や物流などの細部にもこだわることで、優れたリーダーになったのです。
マネージャーがやるべきこと「支援・敬意・信頼」
また、ビル・キャンベルはつねに「人がすべて」という信条を持った人でした。
コーチをしていた全員に、マネージャーは支援・敬意・信頼を通して、優秀な人材が活躍できる場を提供すべきだと伝えていました。支援・敬意・信頼とは下記の通りです。
支援
成功に必要なツール、情報、トレーニング、コーチングを提供すること。スキルを開発するために努力すること。彼らがスキルを開発するために努力し続けることだと言います。成長を手助けすることが支援なのです。
敬意
一人ひとりのキャリアの目標を理解し、選択を尊重すること。会社のニーズに沿う方法で彼らのキャリア目標を達成できるよう手助けする
信頼
自由に仕事に取り組ませ、決定を下させること。成功を望んでいると信じ、成功できると信じること。
ミーティングの始め方
ビルキャンベルはミーティング始め方も非常に独特でした。ビジネスの場では、先に議題から始めるでしょうが、ビルは「週末何していたのか?」から始めるのです。
その目的は次の2つです。
- チームメンバー同士がお互いを興味深い人間として知ること
- 専門家ではなく人間として最初からミーティングを楽しめるように
なぜ、そのようなことをするのでしょうか?
それは、「楽しい職場環境が高いパフォーマンスを生み出す」からなのです。楽しい職場環境を生み出す手取り早い方法が、家族や楽しいことについて話すことなのです。
1on1・スタッフミーティングを正しくやる
1on1とスタッフミーティングの役割の違いは下記の通りです。
- 1on1:定期的に部下の状況をアップデートし、成長する手助けをする場
- スタッフミーティング:最も重要な問題と機会について話す場
1on1で解決できそうなことをスタッフミーティングで話せば協力しあいながら解決するチームにすることができる。
1on1の進め方
1on1で部下を評価し正しい軌道に戻すことが重要である。上手い人は
- 優れたプロセスを持ち、部下に説明責任を持たせる
- 最高の人材を評価しフィードバックを与え、給料を払う
業績を挙げる企業には、下記のような業績志向の管理手法を取り入れている。
前提として、本心から人々に興味を持つことが必要
- 意味のあるプライベートの会話をする「お子さんは元気?」
- 仕事の話「何に取り組んでる?うまくいっているか?何か力になれることはあるか?」
- 同僚との関係「同僚からの評価を良くするにはどうするか」
- チームの問題「方向性を常に強調しているか」
すべての部下を我が子のように思え。すべての部下にリーダーから直接メールを送ること。
ミーティングを行う際の注意点
ミーティングでは資料を事前共有すること。最初の議題は業務報告取締役会では最新の情報を共有できるようにする。業務報告の資料の大部分は事前に送っておき、質問を持って会議に来ることを期待する。
また、リーダーがミーティングを仕切ること。会社でも、CEOが取締役と取締りや取締役を仕切る。その逆はない。CEOが自分の議題を持っていないか、持っているのにそれに沿って話を進めない時は、取締役会は失敗する。
ミーティングでは、良い点(ハイライト)と悪い点(ローライト)の報告もする。
悪い点では、収益成長、プロダクトの限界、従業員の離職、イノベーションの停滞などに関する率直な報告が必要。2002年のハーバード・ビジネス・レビューにも「敬意と信頼、率直性の好循環」が「すぐれた取締役会を有効に機能させる」と言う。
ただ、ハイライト・ローライトについては資料では事前送付しない。ローライトに囚われて会議にならなくなるから。
規格外の天才の扱い方:バランスが大切
チームの差別化には規格外の天才の存在が必要です。
しかし、チームのコミュニケーションを阻害し、人をさえぎったり、攻撃したり、発言しにくい空気を作る可能性が高いのが規格外の天才のデメリットでしょう。
規格外の天才によるダメージコントロールに時間をかけているなら扱い方を変えた方が良いでしょう。規格外の天才をうまく活用するには、寛容になり、自由を与えて守ることである。しかし、チームのダメージコントロールに時間がかかるのであれば、肩を持つ必要もない。バランスが大切である。
決断力「リーダーの仕事は決めること」
ビルは民主主義は好まずに、コンセンサスを作ることではなく「最適解」を得ることを重視したと言います。
というのも、グループシンク(集団浅慮)になると、意思決定の質が低下しがちだからです。
では、最適解を得るにはどうすれば良いのでしょうか?
グループ全体で話し合い、問題を公開し意見を述べる機会を与える。そして、その分野に精通した人に議論をリードさせることでしょう。
でも一番大切なのは、ミーティングの前にメンバー一人ひとりと話をして、チームメンバーが何を考えているのかを知ることにあります。
- 全員が自分の見解を述べる準備ができた状態でミーティングに臨められる
- 議論を交わす前に、自分の考えや意見をまとめる機会を得た
良く答えを一方的に言ってしまうマネージャーがいますが、答えを知っていても言ってはいけません。
なぜなら、チームが力を合わせるチャンスを奪ってしまうから。
最終的に議論の決着がつかなければ、マネージャーが議論に決着を付けないといけません。
個人ではなくチームのためや会社のために決定を下すのです。自分たちにできる最善の決定を下し、間違っても良いから行動を起こすことが重要なのです。
また、ビルは、第一原理で人を動かすことを意識していました。
第一原理とは、全ての人が受け入れる原理のことです。会社やプロダクトを支えている不変の真理を明らかにすることで第一原理を見つけることができるでしょう。
というのも、ビルは、会社の意義はプロダクトのビジョンを実現することにあると考えていました。
適切なプロダクトがあり、適切な市場に適切なタイミングで提供できるなら、可能な限り早く世に出す。
小さな問題やすぐに対応が必要なこともあるだろう。だがとにかくスピードが大切である。マーケティングが力を失ったのは、プロダクトが弱くなったからでもあると考えていました。
1兆ドルコーチから学ぶ人の扱い方
信頼の非凡な影響力
ある学術論文では、信頼を「相手の行動へのポジティブな期待に基づいて、進んで自分の脆さを受け入れようとすること」と定義している。信頼している相手には自分の弱さを見せられることである。
信頼を構築する具体的な行動とは?
- 約束を守ること
- 誠意
- 率直さ
- 思慮深さ
意見が合わない時でも信頼をもとに関係を深めたと言います。
そして、信頼している相手にはチームとしても反対意見が出しやすく成果を上げやすいと言います。
仕事をしていると、意見の不一致は良く起こり、その後、関係性が悪くなってしまう。そういった不和を起こさないためには、まず信頼を構築することが重要だと論文では書いてある。
お互いの意見が間違っていても、信頼があれば、感情的なしこりが少なくなる。
心理的安全性を高める
コーネル大学の研究によると、最高のチームは心理的安全性が高いチームだと明らかにされています。
チームの心理的安全性とは「チームメンバーが、安心して対人リスクを取れると言う共通認識を持っている状態であり、ありのままでいることに心地良さを感じられるようなチームの風土」のことです。恐れずにありのままの自分でいられるような関係を作れれば、結果を出しやすいチームになるでしょう。
では、心理的安全性が高いチームを作るにはどうすれば良いのでしょうか?それは、コーチングが受け入れられる人をコーチングすることです。つまり、一緒に働く人を選ぶことが最も重要なのです。
コーチングが受け入れられない人だらけになると、重大な大義のために貢献する人が出来ない人だらけになる。その結果、心理的安全性が高いチームを作ることはできない。
ビルが求めたコーチングを受け入れられる人の姿勢は下記の通り。
- 正直さ
- 謙虚さ
- 諦めずに努力を厭わない姿勢
- つねに学ぼうとする姿勢
質問をして相手を引き出す「具体的な指図はしない」
2016年のハーバード・ビジネス・レビューに下記のように書いてあります
発見や洞察を促す質問をする人は最高の聞き手だと相手に思われる
どんどん質問することで、本当の問題に気づかせる自分から回答は言わない。返答にじっくりと耳を傾けるスタイルは、2016年の研究で評価されている。その理由は下記の3つを高めるから
- 有能感
- 関係性
- 自立性
ありきたりな声かけをすることも、優れたリーダーシップの重要な側面でもある。
スウェーデンのルンド大学の研究によると、ありきたりな声かけをすることは、「自分は尊重されていて、リーダーシップの一端をになっていると感じさせることが可能」だという。
また、コミュニケーションする際には具体的な指図をすることはNGです。その代わり、成功体験ではなく、自分に起こった出来事や物語を語り、相手に考えさせ流のが良いのでしょう。
では、どのような人になればそのようなリーダーになれるのか?GIVE & TAKEの著者、アダムグラントによれば「人当たりの悪いギバー」になれという。
本当は親身になりつつ、厳しく挑戦を促すべきだ。高い基準と期待を示し、到達できるように励ましを与える。誰もが聞きたくないが誰もが聞く必要のある、批判的なフィードバックをあえて与える人たちだ。
GIVE & TAKEの書評は下記からどうぞ
1兆ドルコーチから学ぶ「チームファーストの精神」
共通の目的の元で力を合わせることで多くのことが成し遂げられます。ビルはチームファーストの指針を原則としていました。
では、どのようにしてチームのパフォーマンスを高めていくのでしょうか。
一人一人のエゴを考える
個人の目的、プライド、野心、エゴについて考慮に入れなくてはチームをまとめることができません。
そのため、一人一人のエゴを考え、エゴを超えて協力した先に、どの程度の価値を生み出せるのかを理解し、理解させることが必要なのです。
まずは、チームを一つにすること。例えば、チームの力関係に注力したり、チーム中で不満を募らせ、緊張をもたらす厄介者の問題に取り組む。
問題の大きさではなく「誰が対応しているか?」で考える
問題に対処する時には、チームの観点から考えて大丈夫か判断する
- 誰が問題に当たっているのか
- 適切なチームが適所に配置されているか
- 彼らが成功するために必要なものはそろっているか
チームを運営するなら人材にこだわれ
チームを運営するなら本当にずばぬけた人材で周りを固めろ業務統括はCEOより優れた人でなければならない。
ビルが必要だと認めた人材の4つの資質
- 知性「さまざまな分野の話をつなげる能力」
- 勤勉
- 誠実
- グリット
ビルは、この4つの資質がある人には、多くの欠点に目をつぶったと言います。
4つの資質があるかどうかを見分けるためには、「何を成し遂げたか」よりも「どうやって成し遂げたか」を聞く。そうすれば役割がわかる。陣頭指揮をとったか、実行家だったか、チームを構築したか。
また、チームメンバーのチームファーストの姿勢も重要視していた。何かを犠牲にしたり、他人の成功を喜ぶことがあるかを注目すれば良い。
逆に、「質問するより答えることの多い人」は学ぶことをやめた人たちであり、彼らをもっとも嫌っていた。
チームの関係性をよくしたければ、ペアで仕事に取り組ませて、信頼関係を生むことにある。仕事を割り当てるのではなく、ペアで仕事に取り組ませるのである。
チームの最大の問題に切り込む
ビルはチームの最大の問題に切り込むことを頻繁に行っていました。
最大の問題の見つけ方は下記の通りです。
- チームがその問題を率直に話せるかどうか。
- 政治が関わっている問題かどうか。
悲観ムードになったら、ストレスの根本原因を突き止め、それに働きかけることが重要である。
徹底的にポジティブになる。ポジティブなリーダーシップが問題解決を促すは研究でも明らかになっています。まず褒めて、励ますことが大切。
パワーオブラブ
ビジネスには愛が不要だと思うかもしれません。
しかし、ビルはビジネスに私情をもちこみ、一緒に働く人の仕事、プライベート、家族、感情などを気にかけ、一人一人を大切にしていました。
慈愛に満ちた企業は、従業員満足度とチームワークが高く、欠勤率が低く、チームの成績が高いことが証明されている。
ビルはよく次のように言っていたそうです。
人を大切にするには人に関心を持つ
人に関心を持つビルは下記のような行動をとっていました。
- 人の名前を覚える
- 温かい言葉をかける
- 同僚の家族と実際に知り合う
- 思いやりを職場に持ち込む
- 家族のことを質問する
また、リーダーが率先してメンバーを助けることによって、組織としての思いやりが正当化される。
人助けを楽しむ
人助けを楽しむことにより、人との関係性を構築することができる。
GIVE & TAKEで書かれている「5分間の親切」がそれに当たります。
ただし、誰にでも親切にすれば良いというのではないです。
他人を助けることのメリットが自分の負担を上回るかどうかを意識しなければいけません。これを実行するには、自己防衛型のギバーとなれば良いのです。
自己防衛型のギバーは「自分の限界を自覚しており、寛大な行動を楽しみながら持続できるよう、小さな負担で大きなインパクトを与えられる方法を探す」と言われています。
創業者を愛する
創業者を愛する。本書では創業者を下記のように解説しています。
圧倒的に不利な状況での生死をかけた闘いだと理解するまともさと、自分は成功できると信じるだけのクレイジーさを持ち合わせた人
創業者しか、「会社を前進させるビジョン」を持ち合わせていない。創業者には欠点があるかもしれないが、会社を前進させるビジョンは、欠点を十分に補うものでもある。
創業者を愛し、どんな職務を通してであれ、会社に有意義な方法で関わらせる
1兆ドルコーチを読み、優れたコーチングを学ぼう
優れたコーチングを学ぶことは組織が結果を出すのに欠かせません。
1兆ドルコーチから学べることは下記の通りです。
- 人を大切にする方法
- チームビルディングの方法
- 一緒に働く人に対して愛を示すことの大切さ
1兆ドルコーチを読んで、マネージャー・リーダーに必要なコーチングを学びましょう
以上、書評「1兆ドルコーチ」Google創業者の師匠のコーチングを学ぶでした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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