書評「ジョブ理論」片付けるべきジョブの見つけ方?【イノベーション】

5.0
ジョブ理論

「イノベーションを運に頼らずに意図的に興す方法はないかな?」

「片付けるべきジョブ理論はわかった。見つけ方は何?」

結論から言えば、片付けるべきジョブを見つけることができれば、意図的にイノベーションを興すことが可能です。

人間はジョブを片付けるために、プロダクト/サービスを雇用しています。

例えば、朝にミルクシェイクを雇用する人は、朝の車での通勤時間で、お腹が減り、手持無沙汰な時間が続くので、何とかしたいと考えています。さらに眠気もなんとかしたいという片付けるべきジョブがあります。

最もジョブを簡単にかつ十分解決できるためミルクシェイクを雇用するのです。

このように、ジョブ理論を学べば、片付けるべきジョブが見つかるようになり、イノベーションを意図的に興すことが可能になります。

今回は、クレイトン・クリステンセン教授が書いた「ジョブ理論」を解説します。

「ジョブ理論」あらすじ

イノベーションの成否を分けるのは、顧客データや(この層はあの層と類似性が高い。顧客の68%が商品Bより商品Aを好むetc.)、市場分析、スプレッドシートに表れる数字ではない。鍵は“顧客の片づけたいジョブ(用事・仕事)”にある。世界で最も影響力のある経営学者が、人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解き明かす、予測可能で優れたイノベーションの創り方

引用:Amazon

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ジョブ理論とは「イノベーションを興すための理論」

世界の84%がイノベーションを成長戦略に必要というが、94%は満足していないと言います。

著者のクレイトン・クリステンセンはイノベーションのジレンマという本で破壊的イノベーションを紹介し、イノベーションの世界での第一人者になりました。

破壊的イノベーションと「ジョブ理論」の違い

破壊的イノベーションでできることは「イノベーションに対する競争反応を予測する」ことです。

どのようにすればイノベーションを生み出すことができるのかを教えることができません。

今回、著者が紹介した「ジョブ理論」をマスターすれば、次のことを考えられるようになります

  • 顧客が買いたくなる、使いたくなるようなプロダクトを/サービスの作り方
  • 新しいプロダクトの中で、どれが成功するのか
  • 業界のトップにいるリーダたちをどのように追いやることが可能か
  • どこに新しい市場を作るべきか

つまり、ジョブ理論を学ぶことにより「イノベーションを興すのに必要なこと」が考えられるようになるのです。

人は片付けたいジョブのためにものサービスを雇用する

ジョブ理論を一言で表せば、「顧客が片付けたいジョブを見つけ、それを完璧に片付けられるプロダクト/サービスを考える理論」となります。

人は片付けたいジョブがあるから、そのプロダクト/サービスを雇用しているというのがジョブ理論なのです。

言い方を変えれば、顧客が「進歩」をしたいからプロダクト/サービスを雇用していると言います。

本書の中でもジョブ理論の中核は次のように述べられていました。

ジョブ理論の中核には、単純だが強力な知見が込められている。顧客はある特定の商品を購入するのではなく、進歩するために、それらを生活に引き入れるというものだ。この「進歩」のことを、顧客が片づけるべき「ジョブ」と呼び、ジョブを解決するために顧客は商品を「雇用」するという比喩的な言い方をしている。この概念を理解すれば、顧客のジョブを発見するという考え方が直観的にわかるようになる

ミルクシェイクの例:なぜミルクシェイクが選ばれたのか?

例えば、ミルクシェイクというプロダクトを雇用する人々は次のようなジョブを片付けたくて雇用しています。

  • 朝の通勤の間、目を覚まさせてくれる時間潰しでかつ、空腹をかわしたい
  • 子供にとって良い親でありたい

朝の通勤の間、目を覚まさせてくれる時間つぶしのものはたくさんあります

栄養バー・スムージー・コーヒーなどがあるでしょう。

しかし、競争相手のどれよりも朝の時間の間、目を覚まさせてくれてかつ、空腹をかわすことについて、もっともうまく片付けるのがミルクシェイクだったわけです。

また、子供にとって良い親でありたいというジョブをミルクシェイクは最もうまく片付けます。

子供にとって良い親でありたいというジョブを片付けるには、おもちゃ屋に行って高いおもちゃを買っても良いし、キャッチボールをしても良いでしょう。

その中でミルクシェイクであれば、安くて簡単に子供から良い親だとみられたいというジョブを片付けてくれるので、ミルクシェイクが雇用された理由なのです。

このジョブ理論というのは、これまでのセグベント別に分析をして、数字を出すというマーケット分析では測定できません。

親がミルクシェイクを買うのに、年齢や年収に相関がないですし、分析では動機が明らかにならないからです。

つまり、ジョブ理論という観点から考えた場合、従来のマーケティングの方法では、分析は不可能だと言えます。

ここが、今までイノベーションを興すことができなかった最大の問題点でもあるのです。

ジョブ論は属性の相関ではなく、人が何かを購入した理由である「なぜ?」に注目する理論なのです。

ジョブ理論を活用する「ジョブを具体化する方法」

ジョブ理論で最も重要なことは、人のジョブを理解することです。

本書では、ジョブを理解するために、特定の状況で進歩を遂げようと苦心している人を思い浮かべると良いと書かれていました。

次のようなシーンに基づいて短編の動画ドキュメンタリーを作るように思い浮かべると良いでしょう。

  • 成し遂げたい進歩は何か?
  • 苦心している状況はなにか
  • 進歩を成し遂げるのを阻む障害物は何か
  • 不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか
  • その人にとって、より良い解決策をもたらす品質の定義は何か、またその解決策のために引き換えにしても良いと思うものは何か

成し遂げたい進歩は何か?

人には成し遂げたい進歩が必ずあります。

尊敬される父親でありたい・自分のチームの売り上げをもっと上げたい・第一印象を良くしたいということがあるでしょう。

進歩は大きく分けると3つの側面があります。

  • 機能的
  • 社会的
  • 感情的

それぞれの側面に基づいて「成し遂げたい進歩は何か?」を考えてみると良いでしょう。

苦心している状況はなにか

成し遂げたい進歩があっても、実際にその進歩がうまくいかずに困っているケースがあるでしょう。

子供から尊敬されない・チームの売り上げは最下位だ・第一印象で誤解されてしまう。といったように、苦心することは容易に想像できると思います。

進歩を成し遂げるのを阻む障害物は何か

進歩を成し遂げているのを阻む原因となっているものを考えてみましょう

仕事が残業続きで且つ休日も仕事があり、子供との時間が取れない・チームのやる気がなくて行動量が少ない・金髪のため素行が悪いように見られる…などと言ったことが考えられるでしょう。

不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか

ジョブを完全に片付けられないようなもので代替していないか、一時しのぎのことをしていないかを考えてみましょう。

例えば、子供に尊敬されるために、高い金を払って旅行に連れて行っている・自分が人一倍売り上げを上げる・スキンケアを頑張り肌質をよくするなど。

その人にとって、より良い解決策をもたらす品質の定義は何か、またその解決策のために引き換えにしても良いと思うものは何か

最後に、その人にとってより良い解決策をもたらす品質の定義を考えます。

例えば、子供との時間を持ちたい。ただし今と同じ仕事の質をキープしたい・チームのやる気が低くても売り上げが上がる仕組みが欲しい・金髪であっても第一印象が良くなる見せ方を学びたい。などが挙げられます。

このように、動画ドキュメンタリー調で考えることで、消費者がどの程度困っているのか、解決策では充分に間に合っていないことがわかるようになれば、イノベーションを興すジョブとしては最適だと言えます。

本書でも、次のように述べられていました。

ジョブ理論は、消費者がさほど困っていなかったり、存在する解決策で充分間に合ったりするときには役に立たない。商品取引のように、ほぼすべてが数学的分析によって決定される場合にも有益でない。コストや効率は、ジョブ理論でいうジョブにとって中核をなす要素ではない。そのような状況では、進歩を遂げるための社会的、感情的、機能的側面をとり混ぜた複雑なニーズがない。

ジョブはどこにあるのか?「ジョブを発見する方法」

ジョブ理論を実践するのに、まず必要なことはジョブを発見することです。

ジョブが発見できれば、先ほど開設したジョブを具体的にする方法を実践することにより、ジョブを満たすプロダクト/サービスを作ることができるでしょう。

ジョブを発見する方法は次の通りです。

  • 生活に身近なジョブを探す
  • 無消費と競争する
  • 間に合わせの対処法をしているか
  • できれば避けたいことから探す
  • 意外な使われ方をしているか

生活に身近なジョブを探す

ソニー創業者の盛田昭夫さんは、数多くのイノベーションを興してきました。彼が後進に対して「人々の生活を注意深く観察して彼らの望みを直観し、それに従って進む」と語っています。

生活の中の身近なジョブを探すのは、直観がすべてです。自分が生活で困っていること、他人が生活で困っていることを見て、片付けるべきジョブが見つかるかというひらめきが起きるかどうかだと言えるでしょう。

自社のサービスを使ってみて、ジョブが完璧な片付くか試す

無消費と競争する

片付けるべきジョブがあるのに、十分な解決策がないため、何も雇用していない人もいます。

それが無消費です。

残念ながら無消費の人は、既存のマーケティングのような分析からは出てきません。本書の中でも無消費は意識して探さなければ見つけることができないと言います。

無消費を見つけるには、「あなたのプロダクトも他社のプロダクトも買っていない人はなぜ買っていないのか」を探る必要があります。

間に合わせの対処法をしているか

間に合わせの対処法は、片付けるべきジョブに十分な解決策がないため、現在の解決策に満足しておらず、消費者なりに考えた解決策のことを言います。

消費者が間に合わせの対処法をしているか否かは、片付けるべきジョブに対して、現状でどのように対策をしているのかを注意深く見る必要があるでしょう。

とても重要なジョブなのに他に方法がないから間に合わせの対策をしているので、注意深く観察する

できれば避けたいこと「ネガティブジョブを探す」

できれば避けたいことは「ネガティブジョブ」と言いますが、ネガティブジョブもイノベーションの優れた機械であることが多いと言います。

できれば避けたいけど、片付けなければいけないジョブを早く処理できる方法はないか考えると、ネガティブジョブが見つかるでしょう。

意外な使われ方をしているか

意外な使われ方をしている製品があります。それは、片付けるべき別のジョブがあることの証明です。

その使われ方から片付けるべきジョブを見つけ、より簡単に片付けられるようなプロダクト/サービスを作ると、イノベーションにつながるのです。

ジョブ理論を活用している例:Amazonのジョブの対処法

ジョブ理論をうまく活用しようと思ったら、顧客のジョブがどの程度解決しているのかを測定可能にする必要があります。

Amazonは顧客のジョブに対処するために、顧客のジョブがどの程度達成できているかを測定する基準を作成しました。

アマゾンは創業当初から、顧客のジョブを解決するための3つのポイント──豊富な品ぞろえ、低価格、迅速な配送──につねに意識を集中し、それらを実現できるようにプロセスを整備してきた。プロセスには、この3つのポイントをどこまで達成できたかを分単位で測定し監視する機能も組みこまれている。

ジョブ理論を活用してイノベーションを興してみよう

ジョブ理論を活用することにより、それまで運に頼っていたイノベーションを意図的に興すことが可能となります。

ジョブ理論をまとめると次のとおりです。

  • 人がプロダクトを雇用するのは「ジョブを片付けたい」から
  • ジョブを発見して、ジョブを片付けるサービスを作る
  • 属性ではなく、顧客のジョブに注目する

ジョブ理論を活用するには、「片付けるべきジョブを発見」し、「十分な解決策」を用意する必要があります。まずは、あなたの身の回りにある片付けるべきジョブから探してみましょう。

以上、書評「ジョブ理論」片付けるべきジョブの見つけ方?【イノベーション】を解説しました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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