「判断を間違えた…」
「人はなぜ判断を間違えてしまうのだろうか…」
人間である以上判断を間違えることはよくあります。
判断を間違えるメカニズムを知れば、判断を間違えが少なくできるでしょう。
判断を間違える原因は、検討したつもりになり、実は認知的な錯覚に気付かないことです。
今回紹介するファスト&スローは「いかにして人は認知的な錯覚に陥るのか?どのようにすれば合理的な判断ができるのか?」について書かれている本です。
著者のダニエル・カーネマン2002年にノーベル経済学賞を受賞し、その論文を一般的にまとめたのが本書になります。全ての意思決定者に読んでいただきたい本です。
「ファスト&スロー」あらすじ
整理整頓好きの青年が図書館司書である確率は高い? 30ドルを確実にもらうか、80%の確率で45ドルの方がよいか? はたしてあなたは合理的に正しい判断を行なっているか、本書の設問はそれを意識するきっかけとなる。人が判断エラーに陥るパターンや理由を、行動経済学・認知心理学的実験で徹底解明。心理学者にしてノーベル経済学賞受賞の著者が、幸福の感じ方から投資家・起業家の心理までわかりやすく伝える。
引用:Amazon
下巻はこちらになります。
目次
ファスト&スローを読んだ方が良い人とは?
ファスト&スローを読んだ方が良い人は下記の通りです
- 思考のシステムに興味がある方
- 反射的にものごとを決めてしまう方
- ものごとを深く考えることが出来ない方
- 意思決定に関係する仕事についている全ての方
- ビジネスマン・経営者・消費者・政策立案者・教育関係者・司法関係者
ファスト&スローとは早い思考・遅い思考の2つの思考のシステムのこと
人間には2つの思考のシステムがあります。1つ目は早い思考・2つ目は遅い思考です。
本書の中では、早い思考と遅い思考をシステム1とシステム2と分けて書かれています。
- 早い思考=システム1
- 遅い思考=システム2
今回の記事ではわかりやすいように、システム1のことを「早い思考」、システム2のことを「遅い思考」と書かせて頂きます。
システム1=パっと見てすぐに答えが出るのが「早い思考」
意識することなく脳が動くことで答えが出るものが早い思考と言われています。
つまり、パッと見てパッと答えを出せるものは早い思考ということです。
早い思考の特徴は、努力が全く不要・すぐにわかる・すぐに行動する
システム1の特徴
- 印象・感覚・傾向を形成する→遅い思考に承認されると確信・態度・意思になる
- 自動的かつ高速で機能し、コントロールする感覚はない
- 特定のパターンが感知された時に意図的に注意可能
- 反応や直感を訓練や専門技能で形成可能
- 観念の整合的なパターンを形成する
- 認知が容易だと真実を錯覚し計画を解く
- 驚きの感覚により通常と以上を識別する
- 因果関係や意思の存在を推定したり発明する
- 両義性を無視し疑いを排除
- 信じたことを裏付けようとするバイアスがある(確証バイアス)
- 感情的な印象で全てを評価する(ハロー効果)
- 手元の情報だけを重視し手元にない情報は無私(見たものが全て)
- いくつかの項目について日常的なモニタリングを行う
- 平均はできるが合計は出来ない
- 異なる単位のレベル合わせができる
- 意図する以上の情報処理を自動的に行なっている
- 難しい質問を簡単な質問に置き換えてしまう可能性がある
- 状態よりも変化に敏感
- 低い確率に過大な重みをつける
- 感応度の逓減を示す
- 利得よりも損失に強く反応する
- 関連する意思決定問題を個別で扱う
引用:ファスト&スロー(上巻)156~157Pを基にして作成
システム2=頭を使って注意深く考える「遅い思考」
意識して脳を動かし答えを出すものが遅い思考です。
つまり、パッと見たものをパッと答えを出すのではなく、「ちょっと待てよ」と立ち止まって注意深く検証したり考えたりすることが遅い思考ということになります。
遅い思考の特徴は、頭の使わなければ動かない
意識して注意して考えることが遅い思考と言われてます
「ファストである早い思考」が騙されるケース
ファストである早い思考は往々にして間違える
見たものが全てだと判断の材料が無いのに誤解している
手持ちの情報量と質ではなく説明に筋が通ってれば正しいと誤解してしまう
情報の出し方により見たものが全てと思い込んでしまう
生存率90%と死亡率10%は同じことを言っているが、生存率90%の方が力強いイメージ
ハロー効果により一つの評価が判断基準となってしまう
まある一点の評価良かったり、ある一点の評価が悪いと、他の評価も悪くなってしまうことがあり、これをハロー効果と呼ばれています。
ハロー効果
ハロー効果とは、ある対象を評価するときに、目立ちやすい特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のこと。光背効果、後光効果とも呼ぶ。
引用:ハロー効果
好意的なものが1つでも関連していれば好意的な評価を下してしまう
投資家がメーカーを投資しようとする時に、メーカーの製品をすごく気に入ってると企業の将来性などを見る前から好意的な判断を下してしまいます。
早い思考は、なにか一つでも好きなことがあれば、その好きなことを基準として全体の評価を下してしまうのです。
日常的な行動や相手の顔が好意的だと好意的な評価を下してしまう
日常的な行動も相手の顔からも私達は無条件で影響をうけてしまっています。
相手の日常的な行動が好意的なものであれば、その人の人柄についてよく知らないのに好意的な判断を下してしまいます。
相手の顔がしっかりした顔であれば、「きっとしっかりした人なんだろうな」って思うものなのです。
人は見た目が9割と言いますが、早い思考で判断する分には正しいということですね。
少ない事例しかないのに好意的な結果が出ていると好意的に思ってしまう
少ない事例で好意的な結果を出した場合というのは好意的な評価をされることが多いです。
たまたま偶然売上が上がったことが繰り返されたという可能性もあるにもかかわらず「あの人の手腕は素晴らしい」と思ってしまう場合もあるということですね。
早い思考って本当に騙されやすいですよね。
数字が出てくると影響されてしまい騙されてしまう(アンカリング効果)
数字というのは必ず人の心情に影響を与えてしまうものです。
セールで今なら◯◯◯円お得!って書いてあった場合に「あら安い」と思ってしまうのが早い思考です。
安い・高いというのは他の市場価格と比較して判断するべきものなのに、◯◯◯円ということが書いてあることにより、安い印象を与えてしまうのです。
数字って怖いですね…。
最近見たことや起こったことを信じやすくなってしまう
統計的には両方共可能性は変わらないにもかかわらず、最近ニュースで見たとかで知っていることに対してリスクを感じる傾向があるということです。
感情的になると「スローである遅い思考」も早い思考を擁護する
早い思考は特に騙されやすい傾向があります。
早い思考が間違っている可能性があるので、意図的に遅い思考に切り替えて正しい結論を出すことが大切だと言っていますが、逆に遅い思考が早い思考の結論を擁護するケースもあります。
感情的な要素が入ってくると遅い思考は早い思考を批判するのではなく擁護に回ってしまうのです。
遅い思考が早い思考を擁護する例
- 恋人と喧嘩して、早い思考でカッとなって「別れてやる!」って思う→遅い思考は「分かれるべき理由を探す」
- 臨時収入が入って、早い思考で喜びのあまり「車を購入!」→遅い思考で「車を買ってしまった正当性を探す」
本来であれば、結論が間違っているかどうかを判断するべきなのに、結論が正しいと示す情報や検証は無いかと考えてしまうのです。
ファスト&スローを理解して「早い思考が騙されるのを防ごう」
早い思考が騙されやすいということを述べ続けていましたが、早い思考が騙されることを回避することってできるのでしょうか?
著者によると「あまり期待できそうにない」と言いながらも所々で解決策について触れられています。
早い思考に惑わされないための著者の提案
- 他人や自分自身について、判断や選択の間違いを突き止め理解する能力を高めること
- 評価を数値化できならば、直感に頼らず数式を作ってみること
- 個人で決定せずに組織に任せる
- 早い思考に起因するエラーを防ぐ方法は原理的には認知的錯覚に陥っている兆候を見逃さずに、スローダウンして遅い思考に応援を求める
出来事についての即断をくださないというあたりが「夜と霧」の態度価値に似ていますね…
ファスト&スローを理解すれば騙されないようになる
人間の脳は怠惰であり考えたくないと無意識に思っている生き物だと言われています。
人間はいつも早い思考を使って反射的に生きています。
時々ちゃんと考えないといけない時があります。
本書では、意識をして遅い思考を使うべき時の判別法が書いてあります。
遅い思考で考えた方が良い時をどうやって認識するのかをが考えてあるということですね。
今回紹介した早い思考が騙されているという例は一部であり、全体を知りたい方は本書をよくよくご覧ください。
具体例が沢山掲載されていてとてもわかりやすい内容です。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
下巻はこちらになります。
おなじような認知的な錯覚を考えた本がマルコムグラッドウェルの第1感です。ファスト&スローがおもしろいと思った方は、第1感を読んでも恐らくおもしろいと思うでしょう。下記に書評を紹介しています。