「売買回転率が高いのはどうして悪影響なの?」
「売買回転率が高いと何が損なの?」
投資信託やETFなどのファンドの情報を調べると出てくるのが売買回転率という言葉です。
売買回転率を検索すると、売買回転率が高いと見えないコストがかかっていると書かれています。
実際に投資信託では売買回転率がコスト高につながる可能性がありますが、ETFではその可能性は低いです。
というのも、ETFは売買を現物などでやり取りすることが多いことや、指数に連動するように運用されていることから、そもそも銘柄の入れ替えがすくないので、コストが低いからです。
今回は売買回転率がファンドに及ぼす影響について、投資信託やETFに分けて解説したいと思います。
この記事で学べることは?
- 売買回転率の意味と悪影響になる理由が学べる
- ETFには売買回転率の指標はコスト的にはあまり意味がないと学べる
- 売買回転率に基づく理想的なファンドの選び方が学べる
目次
売買回転率とは?ファンドがどの程度入れ替わっているか
売買回転率とは、ファンドの中身がどの程度入れ替わっているのかを示す指標です。
売買回転率を表す式は、「売買回転率=有価証券売買高÷期中平均純資産残高」で表せると言います。
引用:金融用語辞典 投資信託
つまり、1年間で売買した金額の合計を、いままで積み上がっている純資産残高で割った数が売買回転率なのです。
例えば、売買回転率が100%の場合は、売買高と純資産残高の数字が同じ数字なので、ファンドの中身は100%入れ替わっていると言えます。
この売買回転率でわかることは、ファンドの売買の頻度が高いか低いかです。
売買回転率が高ければ、その分だけ売買が活性化しています。逆に低ければ売買をほとんどしないファンドということになります。
以上が売買回転率についての説明です。
売買回転率が高いと見えないコストが掛かっている…
売買回転率が高いということは、ファンドの売買が活発であるということです。
そこで、問題になるのがコストです。つまり、手数料と税金です。
売買が活発だということは、その分だけ証券会社を通しての売買が頻繁に行われていることになります。その結果、証券会社に多くの手数料を払っていることになるでしょう。
また、売買が活発だということは、証券を現金化している回数が多いことにもなります。利益が出ている場合、キャピタルゲイン税が発生しますので、日本では利益分のおよそ20%が税金として掛かります。
つまり、売買回転率が高いということは、
- 手数料がかさむ
- 税金が高く付く
ということで、ファンドにとっては悪しきものなのです。
特に売買回転率とファンドにかかる税金については、敗者のゲームの中でも下記のように語られています。
ポートフォリオ自体の売買回転率は一般に100%を超えるので(つまり、1年以内に中身が全部入れ替わるという意味)、これに伴って発生する課税分を考慮すれば、税引き後の手取りリターンは前の数字よりさらに3%ほど低い計算になる。
引用:敗者のゲーム
ファンドの売買回転率の平均は130%
米国株のファンドの売買回転率の平均的に130%だと言われています。
the average turnover ratio for managed domestic stock funds is 130%.
これは、一年間にファンドの130%が入れ替わっていることを表しています。
ちなみに、日経新聞が投資信託の売買回転率を計算した記事が2014年に掲載していますが、下記のようになっています。
- ピクテグローバルインカム株式ファンド:122%
- フィデリティグローバルソブリンオープン:27%
- 日経のインデックスファンドの平均:60-110%程度
平気的に、投資信託では売買回転率が100%に設定されているものが多いです。つまり税引後のリターンは、税金分が引かれるため、3%ほど低くなってしまうのです。
売買回転率はETFには無意味
販売会社から直接購入する投資信託の場合は悪影響がありますが、上場投資信託であるETFの場合は売買回転率の高さや低さは、コスト面では無意味です
なぜなら、ETFを運営している株式の売買には税金がかからないからです。
ETFは発行市場と流通市場2つの市場から成り立つ。
- 流通市場:一般人が証券会社より株式やETF等を売買する市場【証券会社→投資家】
- 発行市場:証券会社が運用会社とETFを売買する市場【ETF運用会社→証券会社(指定参加者)】
ETFは、ETFの運用会社から証券会社(指定参加者)がETFを仕入れます。
その後、証券会社を通じて投資家にETFを販売するという流れになります。
流通市場は一般投資家が証券会社を通してやり取りする市場
流通市場の場合、株式などのようにETFも現金でのやり取りになります。利益が出ている場合は、キャピタルゲイン税が課税されるため、コストがかかります。
一般的な投資信託も、流通市場から株式等を購入するため税金がかかります。
発行市場は株式を上場する際に使う市場
しかし、ETFは1990年に上場された比較的に新しい概念であり、少し勝手が違います。上場をしている投資信託のため、発行市場が存在するという点です。
発行市場は、わかりやすく言えばIPOをする市場のことです。株式を発行する時に使う市場のことを言います。
ETFは発行市場で受益権をやり取りする
ETF運用会社は発行市場にて、ETFの受益権と株式や現金を指定参加者である証券会社とやり取りします。
少し難しいですが、端的に言えば、基本的にETFの受益権と株式の移動が多く、キャピタルゲイン税がかからないものが多いのです。
ETF運用会社がどの程度コストをかけているのかは、実際にファンドマネージャーにしかわかりません。
しかし、少なくともパッシブ運用で運用していて、あれだけの経費率の安さを叩き出しているETFの場合は、圧倒的に低コストで運用しているのでしょう。
なかには信託財産という信託銀行に預ける分しかコストが掛かっていないところもあるのです。
売買回転率はどのくらいが理想的なのか?
売買回転率は投資のリターンにかなり影響しています。
ウォール街のランダムウォーカーでは、将来のリターンを予想する上で最も説得力が高いのは、
- 経費率
- ターンオーバー(売買回転率)
だと言われています。
そして将来のリターンを予想する上で最も説明力が高いのは、ファンドの経費率とターンオーバー(売買回転率)だということがわかった。
いったいどの程度の売買回転率が望ましいのでしょうか?
投資信託の売買回転率は50%以下か5%以下
望ましい投資信託の売買回転率は、
- アクティブファンド:売買回転率50%以下
- インデックスファンド:売買回転率5%以下
と言われています。
先ほど紹介したウォール街のランダムウォーカーでも下記のように言っています。
積極運用の投資信託を買うのなら、経費率が五〇ベーシスポイント(〇・五%)以下で、年間回転率が五〇%以下のものの中から選ぶべきだというものだ。
引用:ウォール街のランダムウォーカー
ETFの場合の売買回転率はあなたの趣向による
ETFの場合は、売買をいくら回転させようが発行市場でのやり取りになるため、手数料や税金はかからないと思われます。
そのため、売買回転率とコストには関連性が低いため、売買回転率がリターンを決めるということは当てはまらなという見方が多いです。
ただし、売買回転率が多いということは、株式等を購入して保持する期間が短いということになります。その結果、投資における平均回帰性を無視している可能性もあるため難しいところです。
よって、ETFの場合の売買回転率についてはあなたの趣向によるというのが間違い無いでしょう。
売買回転率が高いからと言って、悪いETFだとは言えないのです。
売買回転率を正しく理解しよう
売買回転率を理解することで投資信託やETFの選び方の助けになるでしょう。
- 投資信託:売買回転率が高いとコスト的に損が出る可能性が高い
- ETF:売買回転率が高くてもコスト的な悪影響は少ない可能性が高い
投資信託を選ぶ時には売買回転率に注目したいですが、ETFを選ぶ際には売買回転率よりも経費率などの指標に注目すると良いでしょう。
以上、売買回転率が高いのと損?投資信託やETFへの悪影響について説明しました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回紹介した本は下記の本です。どれもインデックス投資家には必読書ですね。